栄養士コラム

第78回「子どもたちの“食べる力”を育てる」

中津井貴子

山口県岩国市立周東中学校 栄養教諭

中津井貴子

今の日本は、 食べたいときに食べたいものが手に入り、飽食の時代と言われています。一方では、人間の大切な「食」に関して、労力や時間の短縮のためインスタント化と外食・中食産業が進み、食べることに不自由さを感じない便利な時代になってきました。そのため野菜を多く使った手間のかかる和食料理を作る家庭が減り、食生活の大部分を外部の食産業に頼るという状況が見られています。

食文化を「給食」に

昔から食べ親しんできた、その土地に受け継がれた郷土料理や行事食。それらを食べる機会が少なくなると、その地域の食文化はなくなってしまいます。学校給食は、次世代の子どもたちに食文化を伝え、受け継ぐ大切な役目を担っています。そのためにも子どもたちの記憶に残る食指導と、おいしい学校給食を届け、和食文化を次の世代に受け継ぎ、故郷を誇れる人になって欲しいと思います。

食べることに感謝して

お金さえあれば何でも手に入る時代に生まれた子どもたち。何不自由なく食べられることが当たり前のようになっています。 私たちにとって「食べること」は、多くの動植物の「命」によって支えられていると同時に、多くの人の「手間」によって支えられています。食事ができるまでには、作ってくれた家族やその食べものを育ててくださった生産者、多くの人々の苦労や努力を決して忘れてはいけません。 私は、学校給食を通して、「食」に携わる人たちの思いや労力を子どもたちへ伝え、食べものに対する感謝の気持ちを忘れず食べることの大切さを伝えていきたいと思います。

食べることを大切に思う大人に

給食時間では、苦手な食べものを食べられるようになっていく子どもたちの姿が多く見られます。好き嫌いしないで何でも食べることは、健康な体を作るうえでもとても大切なことです。 食育はその場の知識に留まらず、生活習慣に浸透してこそ役に立っていくものです。子どもたちが、自分自身のことを考えて食べる力を身につけるために、教職員全員で取り組み、家庭と連携した食育を進めていきたいと思います。