栄養士コラム

第84回「鰹節削り体験通して日本型食生活を理解」

中村久美

静岡県三島市立北小学校 栄養教諭

中村久美

三島市では、平成22年度から日本型食生活に即した食育を推進するために、週5日米飯給食を実践しています。地元産の米と野菜を使用した和食に適した献立は、食材の豊富さにより、生活習慣病の予防につながる他、地場産物の消費拡大や、作り手の顔が見えることによる安全・安心を得られること、そして生産者と児童が交流する機会を持つことができ、子どもたちが感謝の気持ちを持つことができる等、たくさんの良い効果がみられます。

子どもから「だし」理解を

市内14の小学校は単独調理場で、9校は家庭用1升炊き電気炊飯器が導入され、各クラス2台の炊飯器で炊きたての温かいご飯が提供されます。ご飯そのもののおいしさからか、残食率が激減しました。なお中学校は、平成14年度より市内7校を3つの共同調理場で委託業務により運営しています。
和食のおいしさの要は「だし」です。「だし」の微妙な味わいやうま味を感じることができる感性、感じることができる味覚を育てるためには子どものうちから本物の「だし」に触れることが必要です。5年生の家庭科では「だしの取り方」の学習がありますが、全学年でだしについて理解を深めることが大切です。

削りたての鰹節に舌鼓

たくさんの子が「おいしい、おいしい」と言って、自分の手で削った鰹節を何度もご飯やみそ汁にかけて食べました…11月の和食の日の給食時間に行った、「だし」のうまみを味わう「鰹節けずり体験」のひとこまです。これは、子どもたちの「豊かな感性」を育むための手立ての一つとして実施しています。スケルトンの鰹節削り器を使用し、1年生全員が鰹節削りを体験しました。いずれも教育委員会で用意され、必要な学校に提供されます。
「シュッ、シュッ」という気持ちの良い音と、今まで体験したことのない削る時の感触に感動し、同時に漂う鰹節の香りに、子どもたちは一瞬で「削りたての鰹節は、パックに包装されているいつものものとは違う」ことに気づきました。それを給食の献立と一緒に味わうことにより、いつもの給食がよりおいしくなることを実際に体験しました。
事後の子どもたちからの言葉には「楽しかった」「家でもやってみたい」「苦手な食べ物に鰹節をかけて食べたら食べられた」などがありました。この経験を通じて、日本に伝わる和食文化に興味・関心を持ち、継承していける大人になってほしいと願います。

笑顔で完食できる給食こそ食育に

日本人の食生活が乱れ、食習慣や食の傾向について憂える声が高まる中、次代を担う子どもたちの健やかな心身の成長を願って始められた取組です。「食の基本は家庭生活にある」、「昼食だけ和食にしても」という声もあったようです。「おいしい」と笑顔で完食し、豊かな気持ちで学校生活を過ごす子どもたちを願って、今後とも給食こそ「安全・安心な食」として重要な「食育」の機会として実践を重ねていきます。