栄養士コラム

第87回「将来に向けて“選択する力”養う授業」

仲村みゆき

岡山県岡山市立岡山学校給食センター 栄養教諭

仲村みゆき

岡山市教育委員会は小・中学校9年間を通した食育を推進するよう「基本的な食に関する指導のカリキュラム」(以下、食指導カリキュラム)を平成28年に作成し、小・中全学校に通知しました。これは9年間で児童生徒に必ず身に付けてほしい内容について、学校長のリーダーシップの下、栄養教諭・学校栄養職員が関係教職員と連携・協力しながらの食育を実践するように作成されたものです。

市教委のカリキュラムで弾み

私は現在、学校給食センターで5校の中学校給食を実施しています。中学校では保健体育科で「食生活と健康」、技術・家庭科で「献立作りと食品の選択」の授業をしています。給食センター勤務は初めてで、単独校とは違い、先生方との連絡をとるにも一苦労。そさらに生徒とのコミュニケーションもとりづらく、訪問機会も限られているのが現状です。しかし食指導カリキュラムが市教委から示されたことで、TT授業の依頼がスムーズになり、今まで授業ができなかった学校でも実践できるようになりました。

生徒が献立考案、採用して興味づけ

技術・家庭科では「学校給食の献立を考えよう」と題して、それぞれの学校の授業の時期に合わせて、めあてを「夏野菜を使った学校給食の献立」等とした授業です。6つの食品群と献立作りの手順を学習した後、1日の食事で必要な栄養素を満たす献立を考えるよう指導します。朝食・夕食を栄養教諭が示し、その日の昼食である給食の献立作りをします。給食では2600人分の調理をするため制約のある中で、生徒は一生懸命考えます。実施にあたっては給食ニュース等で各学校にも知らせ、実際に給食として登場するので、他校の生徒もとても興味を持っています。

食生活を身近な想定で自分事に

保健体育科では、Aさんという中3年女子を設定し、その子の1日を追います。部活引退後のちょっと生活習慣が乱れてきた頃の食生活を例にとって、各自問題点を考えた後、班活動へとつなげていきます。最後は自分の食生活に目を向けて、よりよくするために自分ができることを考えさせます。この授業は、ちょうど部活引退前後の3年生が対象なので、自分のこととして捉えることができるようです。
このように、岡山市では食指導カリキュラムに沿って全学校で同じ題材で授業を行い、さらに学校規模等にあわせて他の教科や特別活動等でも食育を進めています。
児童生徒が高校生や一人暮らしを始めた時、自分の体の健康を考えながら食べ物を選択できる能力を身に付けてほしいと願い、日々実践しています。