身近な食材を“学び”の入り口として

「食育では、子供を通して親が最新の知識や情報を学ぶ機会が多い。私達は子供にとってお母さんに近い存在であり、先生とも違う立場で子供と接して、普段の授業とは違う角度から勉強に興味を持ってもらえるところに意義がある」と語るのは、昆布大使として食育活動に取組む石川貴代さん。食育基本法の成立から13年、食育が確立・定着する以前だった親世代にとっても、子供を通じて知る食育の世界は、様々な学びにつながる切っ掛けにあふれている。

槻谷順子さんの顔写真石川貴代(イシカワ タカヨ) 一般社団法人日本昆布協会昆布大使。調味料ソムリエ協会調味料ソムリエプロ(旧称:調味料マイスター)。日本が誇る伝統調味料「さしすせそ」(砂糖・塩・酢・醤油・味噌)や味醂、そしてだし。それらの魅力、奥深さ、関わり方を主婦目線で探求。様々な形で、情報発信している。食育講座や調味料ワークショップを企画し、講師を担当。家庭用調理器具のレシピ監修、調味料メーカーのレシピ開発、食に関する執筆など活動内容は多岐にわたる。

Q:昆布大使とは、どのような役割ですか。

一般社団法人日本昆布協会(以下、昆布協会)が開催する「昆布食育教室」の講師を担当したり、各所の食に関するイベント等にスタッフとして参加します。昆布協会のブログやSNSを活用した昆布と昆布料理の紹介、昆布に関するレシピ提案、レポート報告などが主な役割。昆布に関する知識や活用の普及・昆布文化を次世代へ継承する活動を担っています。昆布協会から任命され、全国各地で活動をしています。 私は昆布協会の事業以外にも、調味料としての活用に焦点をあてた「だし教室」を企画して、昆布協会からサポートを受けることもあります。

Q:昆布大使になったきっかけは。

昆布大使の前に“調味料ソムリエ”を取得したのですが、体調を崩し食事がのどを通らなくなったことがきっかけでした。健康を回復して食べられるようになると、「食事が体をつくる」ということを実感するようになり、もっと食べ物についてちゃんと学びたいと考えました。肉、魚、野菜、全ての食材に関わるのが調味料なのです。
“だし”はその調味料の重要な仲間で、昆布はその主役の一つ。だしと昆布の魅力や奥の深さを多くの人に伝えたいと思い、昆布大使に参加させて頂きました。

Q:「昆布食育教室」での印象や気付きについて。

昆布協会が小学校から依頼を受け、私達が講師として学校訪問して子供たちに授業を行います。私が訪問した都心の小学校では5年生60人と保護者10人ほどを対象にランチルームで、2校時・90分を使っての授業でした。前半を地元の昆布協会会員企業の方がパネルや動画、実物の道具を使って産地や特徴、生育から収穫までの様子についての概要を説明。後半では私が担当して、それぞれ産地の違う昆布(羅臼、日高、利尻、真昆布)から作った4種類の“昆布水”を飲み比べて、違いを体感してもらいました。 味の濃いスナック菓子やインスタント食品を食べつけている現在の子供達に、微妙な味の違いをどこまで分かってもらえるかが課題でした。結果としては、日高昆布と羅臼昆布がほぼ同数で人気。味の印象を聞いたところ「おいしい」とか「少ししょっぱい」といった声が多かったなかで、「苦い」と答えた子供がいて驚きました。昆布の淡い味の中から苦みを感じた感性が凄いです。
思った以上に子供達の興味・関心は強く、授業開始前の準備時間中に次々に現場をのぞきに来て、好奇心がいっぱいでした。

Q:食育の教材としての昆布の魅力は。

上記の飲み比べで日高昆布に人気があった理由の一つには、日高昆布が関東で多く消費されていることがあげられます。子供達が日常の食事で口にしていた味だったと思います。また羅臼昆布は、肉厚でしっかりした味わいのだしが特徴で、そこが好まれたのだと思います。 江戸時代、産地の蝦夷地から北前船で運ばれていた経緯から、今でも北陸では昆布が多く消費されます。水の硬度によりだしの味わいが異なったり、地域によって好まれる昆布の種類も違います。このように食材の昆布を、理科や社会の視点で捉えると、産地や生育、流通や歴史の学びになる奥の深い教材になります。
様々な料理に、昆布を含めた海藻を取り入れているのが日本の和食文化の特色です。お正月の飾りやおせち料理からはじまって、結納など神事・伝統行事に昆布は欠かせません。さらに生育が海洋の変化により敏感に影響を受けることから、地球環境・気候変動という大きな流れを考える糸口にもなります。 ひも解いていくことで、学びが大きく広がるところが魅力です。

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