〝食〟を通して防災リーダーに

クックパッドで公開する「昭和女子大学非常食キッチン」を通して、最近は講演や講習の指導の依頼が増えている。講演現場には学生スタッフを含めた構成チームを引率し、ほぼボランティアで赴任する。「対象の多くは地域の女性・母親。災害が起こった時はこの方々が、〝食〟を通じた地域の防災リーダーとして力を発揮できる。そんな一助となれればいい」と語る。

段谷憲さんの顔写真段谷憲(ダンタニ ケン)
1962年生まれ、北九州市出身。2013年から昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。「食プロジェクト」代表。非常食におけるローリングストックに着目し、大学生と一緒に非常食の在り方を研究中。その一環で、非常食レシピの開発・普及のためクックパッドに「昭和女子大学非常食キッチン」を公開している。

Q:「昭和女子大学非常食キッチン」開設の経緯を教えてください。

昭和女子大学現代ビジネス研究所(以下、ビジネス研究所)研究員の有志6人で始めたミーティングがきっかけ。2015年から「非常食」をテーマに、ビジネス研究に申請し承認を受けて「食プロジェクト」が活動しました。数ある研究所のプロジェクトの一つとして学内に周知され、関心のある学生の自主的参加を呼びかけ、レシピ開発や講習会のスタッフとして一緒に活動してもらっています。
非常食について学ぶ中で「ローリングストック(RS)」を核としたレシピ開発に的を絞り、周知の場として、クックパッドと連携して16年に開設したのが「昭和女子大学非常食キッチン」(以下、ブログ)です。

Q:プロジェクトはどのような活動内容ですか。

私たち研究員が5、6人と、年による変動がありますが今年は8人の学生で、概ね月2回のミーティングと、年4回の実習では各自が「お題」に沿って考案したレシピを作って実演します。その中からこれまでに50数点のレシピをブログに掲載しています。
レシピ掲載を中心にしたブログでの活動報告がベースですが、講演や講習会、授業の指導も学生には実際の社会に触れる貴重な学習機会です。講習会はパッケージにして、RSに関する30分程度の解説、RSの食材を使うレシピの調理実習が1~1・5時間、そして試食を含め約3時間程度です。役割分担ができていて、学生には調理実習のアシスタントや各グループに入って調理の指導をしてもらいます。

Q:ブログでは非常食レシピへのこだわりがあるようですね。

災害復旧ボランティアの活動に参加して被災経験者の方から伺ったことを総合すると、「非常時のおいしい食事」とは何かを改めて考えさせられました。それは平時の「美味しさ」とは別の意味ではないかと思います。それは〝普段から食べ慣れた〟〝温かい〟ものであり、時には〝甘い〟ものがあればほっとすると聞きました。
これを提供する有効な手段の一つがRSです。そして水、卓上コンロとボンベといった最小限の備蓄食糧、備蓄品。RSの考え方をベースとして、非常食の在り方や心得、非常時の調理テクニックを、広く知ってもらうことがブログの目的です。
講演や講習会の開催もブログと同じ目的です。参加者の多くが女性で母親です。災害が起きた時、避難生活の場で本当に必要なのは、地域で〝食〟を通じて健康・生活の安全を確保できるリーダーではないでしょうか。講習会では、参加された方々がそれを担ってもらえるための一助になることを期待している部分があります。

Q:RSの普及がポイントですね。

特別な食材や道具を必要とするのではなく、日常に使っている食材を少し多めにストックして、順々に消費していく。器具も食材も「日常的に少しずつ使う」ことがポイント。そうすることで器具の定期的なメンテナンスにもなる…といった説明をすると、「理にかなっている」「自分にもやれそう」と賛同者も増えています。

Q:プロジェクトの今後はどの様なプランを考えていますか。

これまでは非常食のレシピ開発に力を入れてきたのですが、それと並行して今後は非常食そのものについて、より学術的な研究を深めてければと思います。あるべき非常食としての栄養価やコスト面など、研究課題はいろいろ考えられます。
本来の食事としての非常食の在り方というものが、余り追究されていなかったのではないでしょうか。非常時とは言え食事ですから、「体の栄養」と「心の栄養」の両方がしっかり摂取できる内容でなければ、人の活動には支障が生じてきます。非常時だからこそ、食事はおろそかにしてはいけないと思うのです。

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