栄養士コラム

第73回「郷土につながる給食を」

五十嵐好恵

福島県立盲学校 主任栄養技師

五十嵐好恵

今年も花見山では、桜をはじめ春の花々がきれいに咲きそろいました。東日本大震災が起きた5年前と変わらず、季節がくれば精一杯の花を咲かせています。

食材や献立ごとに線量検査

私の住む福島県福島市は震災の影響こそ少なかったものの、福島第一原子力発電所事故の影響は大きく、現在でも被災した状況が続いています。住宅地に除染廃棄物の黒い包みが積まれ、通学路の空間放射線量の計測ポストは赤い光で線量表示されています。テレビでは天気予報の後に空間放射線量が報道されることが日常の風景となりました。
給食の安全管理も変わりました。毎日、使用食材単品ごと、できあがった料理を献立1食分、それぞれに放射性物質検査を実施しています。食中毒や異物混入の事故対応とは違ったこの確認作業も今では日常として組み込まれています。

安全確認しながら郷土愛育てる

福島県産の食材も基準値以下であることを確認して使用しています。風評や不確かな情報により、福島県産の食材が避けられる傾向もあります。しかし旬の新鮮な食材の良さを安全を確認しながら使用することで、理解が深まると考えています。
地元産物を使う理由の一つは、自分の生まれ育つふるさとを知る=愛することを育てることにあると思っています。子どもたちにはぜひ自分の生まれたふるさとを、大切に思いながら成長してほしい。地域の食材の豊かさを感じながら食事をし、郷土への誇りを育んでほしいと願っています。

大人になっても思い出される食事を

現在、特別支援学校で寄宿舎食を含む3食を提供しています。ふと子ども達が大人になった時の、食材や料理、食事の風景などを想像します。大人になった子ども達の姿に心が温かくなり、その食事が学校や寄宿舎での食事の思い出につながるものだったらうれしいと思います。
しっかり食べて、思い切り笑って、ぐっすり眠ることが当たり前の日々であるように、それを支える食事と食環境を作っていきたいと思います。