栄養士コラム

第111回「20年後の君たちのための食育」

阿部容子

東京都江戸川区立篠崎中学校 栄養教諭

阿部容子

短大卒業後、商事会社の社員食堂に勤務した私は数か月で、栄養士としての役割が見いだせない職場を退職しました。運よく東京都の学校栄養職員採用試験二次募集中で、僅かな日数で書類を整え受験し、晴れて採用となりました。当時の都配置基準は1.5校に1名で、4月にスタートしたところ、不足が生じての二次募集となったのです。

パワフルな応援に感動

昭和51年11月、私が最初に受けた初任者研修会の会場は世田谷区立太子堂小学校、講師は田中信先生でした。それはそれはパワフルな講義で、私たちに「例えば、朝礼で校長先生の代わりに堂々と話しをする学校栄養士になってください。校長先生!私がお話しをさせていただきます。ぐらいの積極性が必要です」と、立て板に水の如く朗々と喝を入れながらお話しする姿。そしてご自身は家庭科教諭でありながら、こんなにも私たちのことを応援してくださる人がいるのかと、感動したのを今でも鮮明に覚えています。後に全国学校栄養士協議会会長(当時)であることを知りました。
朝礼で校長先生の代わりに話をしたこと、昭和61年文部省(現文部科学省)学校給食改善研究指定校を受け、私と学級担任で実践した食教育の授業は、私の食育授業の原点です。

生徒の声から使命を実感

栄養教諭となって中学生に食育授業を実施すると「こんなに大切な授業が聞けて良かった。もっと早くこの授業を受けていたら私の人生変わっていたかも…」「今日は家に帰ったら我が家の朝食について、家族で話し合いたいと思います」「今日学んだことを、母に絶対に教えます」等々の声を聴くことができます。
授業をしながら生徒から学ぶことも多々あります。ほめ上手な本校の先生方からも、いろいろな応援をいただき、日々感謝です。
「毎日、給食美味しいです」「給食、楽しみにしています」等、わざわざ声をかけてくれる生徒達。何て可愛いのかしらと自然に笑みがこぼれます。
将来の人生の選択肢が広がることを可能にする食育は、重要な使命があり、体育、知育、徳育の基本であると痛感しています。

一人ひとりに自己管理能力を

義務教育9年間の締めくくりとなる中学生時代に、学校給食、食育を通し、生徒一人ひとりが生涯を健康に過ごせる自己管理能力を身につけて卒業してもらいたいと模索し奮闘しています。「10年後、20年後の君たちのために」と、食育の授業を展開しながら。