栄養士コラム

第139回「いま思う祖母の教えの尊さ」

嵯峨潤子

岩手県久慈市学校給食センター 栄養教諭

嵯峨潤子

今年のお正月に母方の祖母が天寿を全うして102歳で亡くなりました。自宅でいつも車椅子に座りテレビを見たりしていたのですが、1日中眠っていることが多くなり、クリスマスを過ぎた頃からは食べ物も水分も摂らず自ら枯れていくようでした。「人間の身体は水で出来ている」ということを身をもって私たちに教えてくれました。

祖母は給食づくりの大先輩

祖母は関西の出身で、戦時中は満州で、家族でレストランを経営していたそうです。その後、縁あって岩手に住むことになりました。50年以上前、市内の保育園給食の調理を一人で担当し、手作りのハンバーグなどを作って出していたらしく、当時の田舎の子どもたちにとっては毎日の給食が衝撃的だったのではないかと思います。
退職後、祖父が急逝し、一人暮らしとなったため、高校生だった私と妹が祖母の家に同居することになりました。

手間暇かけおいしい料理を

ある日、祖母がカレーにすると言って、小麦粉やカレー粉をバターで炒めてルウを作っていました。それを見た私は、「これは本当のカレーじゃない。やめて!」と言って近くの店へ市販のカレールウを買いに行き「これで作って!」と作り直しをさせたのです。
毎日おいしいお弁当や食事作りをしてもらっていたのに、反抗期のわがままから祖母にひどいことをしました。栄養の勉強をしてその職に就き、家庭を持つようになって時々ふと、あの時のことを思い出します。手間暇をかけておいしく料理を作るということがどんなに尊いことであるか。できることなら当時の私に話して聞かせたいです。

引き継ぎたい「食」の意義や大切さ

今の私が栄養教諭という立場で、子どもたちや保護者の方々の前で「食べることの大切さ」について話すことができているのは、小さな頃から季節に合わせた料理を作ってくれた祖母のお蔭だなと思っています。
今年度の『食育推進全国大会』は岩手県を会場にWeb開催となり、自然に恵まれた岩手の豊富な食材と郷土料理、様々な食育活動などが紹介されました。これからも岩手の子どもたちの健やかな成長を願って、給食を通して食べることの意義や郷土の食文化などを伝えていけるよう精進していきたいと思います。