栄養士コラム

第157回「食事の楽しみを増やしてあげたい」

五十嵐好恵

福島県立視覚支援学校 主任栄養技師

五十嵐好恵

東日本大震災から12年が過ぎようとしています。福島県では東京電力福島第一原子力発電所事故の発生を受け、児童生徒等の安全安心の確保のため、学校給食における放射性物質の有無・量について分析検査を現在も引き続き行っています。

安心・安全の給食提供を

事前検査として食品ごとの検査と、事後検査として実際に学校給食調理場で提供された給食1食分丸ごとについて検査を行い、どの程度放射性物質(セシウム134、セシウム137)が含まれているかを継続して把握しています。給食実施校では、安全性の確認と安心して食事できる環境づくりを続けています。
今後ALPS処理水の海洋放出が予定されていますが、これからも安全性を確認し正確な情報提供を行いながら安全・安心な給食提供に努めたいと考えています。

幼稚部から成人まで幅広い年代が対象

私が勤務する視覚支援学校では、幼稚部・小学部・中学部・高等部・寄宿舎と、併設されている聴覚支援学校福島校の幼稚部・小学部の給食を提供しています。視覚支援学校には、あんまマッサージ指圧、はり、きゅうの国家資格取得を目指す理療科もあり、3歳から40歳台もいる幅広い対象者への食事提供となっています。

体験を増やすきっかけに給食を

給食は、食事をおいしく食べられること、自分でできることを増やすことを目標に提供しています。視覚や聴覚に障がいのある方が食を通して、実際に体験する感覚を丁寧に積み重ねていく、そのきっかけとしての食事でありたいと考えています。
旬の食材を使って、香りや噛み応え、箸でつかみやすい形状や盛付などを工夫した食事をおいしいと言ってもらえることは、調理室の励みになっています。

以前に戻りつつある給食風景

感染症予防対策として取り組んだ食事環境も今年5月から変わりました。各教室で食べていた給食が、寄宿舎食堂を使って食べるようになり給食時間が以前の風景に戻りつつあります。
旬の食材を使った料理を、友だちと同じ場所、同じ時間に共有する楽しみをこれから増やしていきたいと思います。