食育キーパーソン

スポーツ栄養学は今日をよりよく生きるため

公認スポーツ栄養士(以下、スポーツ栄養士)の活動支援と、スポーツ栄養学への理解・認知を広めることで、「活力ある社会づくりに貢献する」と語るのは(一社)日本スポーツ栄養協会の鈴木志保子理事長。栄養学は病気になった人や予防のための特別なものではなく、普段の食事の在り方そのものだと強調します。学校の給食や食育での指導という観点から、スポーツ栄養学と同協会について話を伺いました。

鈴木志保子(スズキ シホコ)

鈴木志保子(スズキ シホコ)

東京都出身。公立大学法人神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科教授。管理栄養士。公認スポーツ栄養士。実践女子大学、東海大学大学院医学研究科を修了、博士(医学)を取得。2009年4月より現職。(公社)日本栄養士会副会長、(一社)日本スポーツ栄養協会理事長、日本パラリンピック委員会女性スポーツ委員会委員、東京2020組織委員会飲食戦略検討委員など。『理論と実践 スポーツ栄養学』(2018年7月、日本文芸社)をはじめ著書多数。

 

Q:東京五輪2020に向けて、今、スポーツ栄養士の活躍が注目されます。

スポーツ栄養士は日本栄養士会と日本スポーツ協会との共同認定資格で、2008年から始まった専門職です。養成は厚生労働省の補助事業なので、認定は年間70人程度に限られています。今年10月で登録人数は400人近くになり、これでスポーツ栄養士が不在なのは全国でも1県だけとなります。
今の日本では、生まれて今日まで、一度も管理栄養士・栄養士(以下、栄養士等)のお世話になったことがないという人はいないはずです。ところが表舞台にでる機会が少ない立場なので、学生達には栄養士等の本当の仕事内容や役割が理解されていません。でもスポーツ栄養士はイメージしやすい。スポーツ栄養士の活動を支援普及することは、栄養士等のイメージを明確にすることにつながります。そのために、当協会を設立しました。「人への貢献」「社会への貢献」を発信していきたいのです。

Q:スポーツ栄養という特定な分野だけを対象とするのではないのですね。

栄養学は、病気になった人がお世話になるもの、あるいは病気にならないためのものという一般のイメージを変えたい。特別なものではなく、その日の活動を考えて、より自分の生きたい生き方をするために何をどう食べれば良いかを教えてくれるもの。競技スポーツを目指すアスリートではない普通の生活者でも、ちょっとした空き時間に体操をした、時間があったからエレベーターを使わず階段を歩いたなど、意図的な筋力の使い方をした人はその消費エネルギーを補う栄養が必要であって、スポーツ栄養の対象になるのです。「最善のパフォーマンスを考えて、維持するためにちゃんと食べること」が基本です。
例えば多忙で食事に出かける時間がない場合、どのような選択をするか。抜いてしまうことも考えられますし、栄養補助ゼリーを使う方法もある。さらにゼリーで足りない部分を何かで補うという発想もあります。そういう“力”をトータルで、ライフスタイルに合わせてマネジメントするのがスポーツ栄養学の望ましい方向です。

Q:学校の食の指導では、栄養への興味付けが課題です。

栄養は量と種類が整ってはじめて効果を発揮します。例えば小学校1~2年生から3年生(中学年)になるとパンのサイズ(枚数)が大きくなります。そのタイミングを捉えて「どうしてかしら?」と考えさせてください。
2年間で体が大きくなった分、エネルギーもたくさん必要なこと。大人になるほど使うエネルギーが増える、だから食事の量を増やすことでこれを補うのだという話は中学年になれば理解できます。またエネルギーだけで考えてはいけません。いろいろな栄養をバランスよく食べることが大切です。

Q:成長期の子供に効果的な指導法は何でしょうか。

個人差がありますが男子は10代前半、女子はそれより少し早い時期に、成長期を迎えます。特に急速な身長の成長に、他の部分が追いついていけない部分もあります。その時期だからこそ必要な栄養、食べなければいけない食事というものがあります。子供たちにその理由をきちんと語れること、納得させられること、指導が必要だとしたらそのサインを見逃さないことです。栄養士等は普段から情報の収集に心掛け、準備を怠らないことが大切です
特に女子の、誤ったダイエット(痩身願望)は深刻ですね。これから大人になり様々な進路や生き方をしていく。自分らしさやパフォーマンスを発揮していくための10代前後の時期に、健康な体を養っていくために必要な栄養があるのに、誤った情報によって過度なカロリー制限、栄養偏重が見られます。
今後もっと重視しなければならないのが、「ジュニアアスリート」に対する栄養指導で、特に地域のスポーツクラブや部活の指導者にしっかり学んでほしいところです。『食に関する指導の手引―第二次改訂版』(文科省)で私の担当個所の一部分として第6章「個別的な相談指導の進め方」で触れましたが、運動量を越えた栄養摂取の問題が深刻です。
また優秀なアスリートが「ジュニア時代は○○を大量に食べた」といった報道が一部のマスコミで時々ありがちですが、その真似や後追いはとても危険なことです。それだけを食べていた訳ではないはずなのに、食事の全体像が伝わらないので、一般には誤解を招きやすい情報です。

Q:協会として今後力を入れる事業は何でしょうか。

スポーツ栄養に特化した日本初の情報サイト「スポーツ栄養Web」の新たなコンテンツとして先ごろ、“元気いなりプロジェクト”を立ち上げたところです。また「アンチ・ドーピング情報」ではサプリメント活用とアンチ・ドーピングに関する基礎知識をまとめています。
お稲荷さんは酢めしを使っている他、甘辛い油揚げは適度な糖分と油脂、たんぱく質が含まれます。疲れた時や食欲がない時にも、素早くエネルギーチャージができ、片手で手軽に食べられます。具の工夫でボリュームをアップできるし、子供向けキャラいなり、料理初心者向けいなりなどバリエーションも可能。身近なスポーツ栄養食として、広めていきたいですね。

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