食育キーパーソン

異物混入は原因分析と対策で再発防止を

厳しい衛生管理が行われている学校給食の調理現場でも、起こってしまう異物混入。故意ではないので、いつどこでどのように入ったのか等、原因の特定が難しいため最終的には「皆さん気をつけましょう」で終了しかねません。再発防止には、「推測できる原因の範囲を少しでも狭め、そこに向けて有効な対策をたてる」ことが大切だと語ります。

江川永(エガワ ヒサシ)

江川永(エガワ ヒサシ)

1974年生まれ、島根大学農学部卒。元魚肉練り製品メーカーで品質保証部に勤務し、ISO22000の維持管理等を経験。2011年に食品表示検定上級を取得。16年より製造委託先のクレーム削減に取組み、前年比約46%の大幅な実績を上げる。中でも毛髪混入クレームは前年比約80%削減を達成。これらの事例を全国の学校給食関係者や業界団体などを対象に講演している。

 

Q:異物混入の“異物”とは具体的に何でしょうか。

私が対象とする主な異物は虫、毛髪、ビニール・金属やプラスチック等の破片などの異物です。学校給食の調理現場で起こりがちな混入問題は、虫などの異物ではないでしょうか。具体的な対策はそれぞれに違う部分もありますが、基本的な姿勢は同じだと考えます。
学校給食は子供たちのために、美味しいと喜んでもらえる給食を作っているので、故意に異物を入れることなどありえませんから、いつどこでどのようにして入ったか、なかなか混入経路がつかみにくい。そのため原因の究明が難しく、結果的に「気をつけましょう」「頑張りましょう」で幕を閉じてしまうことが多いのではないでしょうか。それではいけません。再発を防ぐためには対象となる異物についての知識を得ることが大切です。

Q:異物への知識とは。

例えば虫対策では、混入していた虫が何かを知らなければなりません。学校ですから理科の先生など虫に詳しい方にお聞きしても良いでしょう。また防虫駆除業者を利用する方法もあります。
その虫が外から侵入したのか、室内に発生源がないかを確認します。また虫の生態から寿命やエサとなるものが分かるので、寿命が切れるまでエサ(巣)を掃除(除去)するようにします。寿命の長い虫で月1回、短い虫なら週1回、それぞれの虫のエサが貯まっている場所を掃除します。

Q:室内での繁殖が多い虫は何でしょうか。

代表的なのが「チョウバエ」「ノミバエ」「メイガ」です。「チョウバエ」は排水口や厨房機器の床下・裏などジメジメしてカビが生えている所、「ノミバエ」は残渣が貯まっている所、「メイガ」は粉がたまっている所に発生しやすい。
たとえばチョウバエ対策では日常の清掃で洗いにくい場所はカビが発生しやすい。カビがチョウバエのエサになるので、カビを除去することでエサがなくなって、薬剤を使わなくてもチョウバエを減らすことができます。チョウバエの寿命は約2週間なので、週1回の頻度でカビ掃除をすることで、徐々に減っていきます。

Q:虫以外の混入対策は何でしょうか。

主に食品工場での対策ですが、装飾品をはじめ従業員の身につけたものと、原材料の包装材からの混入とが考えられます。基本は作業に不要なものを作業現場に持ち込まないことで、微生物管理にもつながるものです。筆記具ではボールペンのキャップ、ホッチキスの針、鉛筆の折れた芯等が盲点です。食品工場向けの事務用品や代用品が販売されているので、それを使うことも対策の一つです。ネットでもいろいろ掲載されているので、情報は収集できます。
原材料の包装材では開封の仕方を工夫します。例えば、開封した袋の切った部分を切り離さず、つけておくことで断片の混入を防ぐ。ボトルの内ブタが混入したこともあり、開封したら内ブタはすぐ捨てることにしました。

Q:品質管理にはリーダーの気付きが大切だと講演で述べていますね。

リーダーは「任せた」「伝えた」つもりでも、従業員は「聞いていない」「伝わらない」ことはたくさんあります。調理現場でのリーダーは栄養教諭、学校栄養士ですが、きちんと伝わったか、リーダーは確認することが欠かせません。
また今後の品質管理には仮説と検証、分析などが必要になってくるのではないでしょうか。分析もデータの蓄積がなければできないので データベースの構築から始める必要があります。給食調理の現場ではまず現状についてのデータを集めるところから始めてみればいかがでしょうか。例えば調理場で原材料から発見された異物を書面で報告して、自治体単位でまとめデータベースに蓄積していく。数値的根拠があれば、改善アイデアの提案にも補強材料になるのではないでしょうか。