食育キーパーソン

「お米マン」と楽しく親しむ食育活動

小中学校や幼・保育園、自治体の食育イベントで「食育ソング」の公演や自身がパーソナリティを務めるラジオ番組でのトークなど、分野を問わず幅広い活動を通して「食育」の大切さを呼びかける「お米マンプロジェクト」代表の小竹一臣さん。日本初の「食育ソングライター」であり、食育インストラクター資格も取得。本業は行政書士事務所を経営する多才さ。食育は教育の基本だという思いが行動力の源泉です。

小竹一臣(コタケ カズオミ)

小竹一臣(コタケ カズオミ)

神奈川県横浜市出身。行政書士、いそご法務小竹行政書士事務所代表、日本音楽著作権協会(JASRAC)会員、食育ソングライター、FMラジオパーソナリティ、お米マンプロジェクト代表、食育インストラクター、根岸小中学校運営協議会委員等。「お米マンプロジェクト」は「すべての人に楽しく明るく食育を」をコンセプトに、食育講話やオリジナル食育ソングで保育園、小中学校、子供会、子ども食堂などで、 音楽イベントを通じて食育を広める活動を展開している。

Q:「食育」との出会いと活動のきっかけは何でしょうか。

10年ほど前から横浜市教育委員会によって根岸小中学校運営協議会の委員に委嘱され、小中学校の授業を参観して給食を試食したりして、食育に限らず意見具申してきました。その中で各教室に2人くらい、午前中から寝ている子どもがいることに気づき、先生に尋ねると朝ごはんを食べずに来る子がいることがわかった。欠食を目の当たりにしたわけです。
学校運営を考える立場なのですが、家庭での食育から正さないと、教育行政がカリキュラムを整えてもガス欠状態の子どもたちでは学習も運動も身につかないのではないかと感じ、自分の課題として栄養の専門家でもない自分に何かできることがないかを考えました。その結果として「お米マン実行委員会プロジェクト」を立ち上げました。

Q:学校運営協議会にはどのような経緯から関わったのですか。

私の行政書士事務所が地域貢献活動として、地元中学校の職業体験を受け入れたことがきっかけです。現在も継続しており、今年度も3月に3人ほど迎えます。個人情報を扱う仕事の性格上、実際に体験してもらうことは出来ないため職業のガイダンスだけですが、これがきっかけで法律に関心をもち、大学の法学部に進学した生徒もいます。後年に報告の連絡をもらい、とてもうれしく感動しました。

Q:食育活動では、なぜ「お米」なのでしょうか。

お米に限らずですが、最も伝えたいのは朝ごはんをしっかり食べること。お米は栄養価が高く、でんぷんはブドウ糖として脳に取り込まれ、脳の働きにとても重要。日本にはお米を中心にした一汁三菜という優れた食文化があるのですから、これを守りながら健康的かつ文化的生活を続けるべき、というのが実行委員会の趣旨です。
お米は日本人の主食であり、米1粒に八十八の手をかけて収穫される日本農業文化のシンボルです。であるのにお米離れのため年間13万トン以上が減反となり、地方では行くたび田んぼがショッピングセンターに代わっていく姿を目にする。日本の将来はどうなってしまうのか。日本の食文化をしっかり守ること、それはいのちを守ることにつながっています。お米一粒に色々なことが詰まっているのです。

Q:プロジェクトの活動は多彩ですね。

プロジェクトの趣旨に賛同して下さった様々な分野の方が、現在28人参加して下さっています。それぞれの立場でご協力頂いています。私に出来ることは「すべての人に楽しく明るく食育を」として活動すること。ゆるキャラの「お米マン」や少年少女合唱団、秋田出身の民謡演歌歌手・池上朝子さんに食育ソングを歌って踊ってもらいます。歌や踊りのあい間に私が、朝ごはんやバランスの取れた食事の大切さについて食育講話するという展開です。
毎年7月の神奈川県食育フェスタには3年前から公演させて頂き、横浜そごう前で何百人もが集まり聞いてくれました。去年は東京都の食育フェスタにも呼んでくださって、保育園児と一緒に代々木公園で歌って踊って注目を集めました。11月の2日間、「とり」で60分のステージやらせていただきました。
また今年4月からはマリンFMという横浜のラジオ局で「食育マリンタイム」という木曜昼27分の番組を担当させて頂いています。ただ私だけが話すのではなく、毎回、食に関係したその道に秀でた方に出演して頂き、皆さんにその活動を広く知ってもらう目的。ラジオは肉声が届けられるので説得力あると思います。

Q:プロジェクトの基本理念は「楽しい食育」でしょうか。

私が作った食育ソング「お米マン」、「お米音頭」の後にお米の話、「朝ごはん食べよう♫」の歌の前に朝ごはんの話。エンタテイメントとして聞く人を飽きさせない仕掛けです。「僕らは小松菜ホウレン草」の歌の後に緑黄色野菜の話。実は歌詞の中にしつこくない程度に栄養素の話を織り交ぜている。
<カゼなんかに負けないぞ 小松菜カルシウム ビタミンと鉄分は無敵のホウレン草…>、「緑茶でチャ・チャ・チャ」は<緑茶でチャ・チャ・チャ カテキン・テアニン ちゃちゃちゃ>と歌いながら覚えてしまう。すると「カテキン・テアニンって何だ? 調べてみようか」と学びにつながっていくのではないでしょうか。

Q:学校給食・食育の関係者へのメッセージは。

栄養教諭・学校栄養職員の皆さんには食の専門家として期待しています。さらに色々な食の世界の方とつながることで、もっと視野を拡げて頂きたい。活躍の場を互いに共有したい。専門知識・技術を自分の周囲だけでとどめるのではなく、他の世界と交流することで化学反応、パラダイムシフトが生まれるとすごく面白いと思います。