栄養士コラム

第122回「前向きに“新しい”給食、“新しい”食育」

熊野由佳子

東京都港区立白金小学校 栄養教諭

島崎聡子

港区は6月8日から給食を再開しました。2月末以来、実に3ヶ月ぶりの給食です。保護者からは「この日を待ち望んでいました」との嬉しい声。一方で校内では、いかに安全に効率よく運営していくか、配膳方法や教員の係分担、子供たちの動線等について検討し、給食室でも衛生管理面での注意点や食物アレルギー対応についての確認をして、初日を迎えました。

いつもと違う給食の風景

さあ!給食時間!でも校舎内は静かです。給食だけではありません。朝からずっと静かです。学年によって登校時間に時差が付けられているため、チャイムも鳴りません。分散登校中の給食は教員が配膳するため、子供たちは手を洗い、順番に給食を受け取ります。食べ始めるまではマスクを外しません。「いただきます」の挨拶も声は出さず、心の中で心を込めて。机は向かい合わせにせず、全員が黒板を向いて食べます。

手作りデザートで気分アップを

献立は、配膳過程での感染防止のため品数を減らし、一週目はお弁当箱に詰めた状態での提供です。ご飯とおかず2品、あるいは丼メニューをご飯と具に分けて。いつもと時程が違う上に、食中毒にも注意を払わなくてはいけない時期でもあるため、献立の幅は限られますが、やはり変化をつけたい。給食で子供たちの気持ちを少しでもほぐすことができればと、手作りのゼリーや果物も献立に入れました。
調理員のみなさんも「子供たちの笑顔のために!」と、心強い言葉。学校給食は、作る我々にとっても仕事以上に感じる遣り甲斐や喜びがあります。そのことを再認識しました。

変わらない食欲に励みと安心

給食時間、教室に行くと声はあまり発しないものの、以前より子供たちと目が合うことが増えたような気がします。目で答えようとしているのかもしれません。目で伝えようとしているのかもしれません。
ある日の朝、学級担任が「昨日、子供たちが献立表の前に集まって『明日はメロンだ!メロン!メロン!』って興奮していて」と笑いながら話してくれました。その日の献立はドライカレーとメロンでした。その教室に行くと「メロンの皮も食べていいですか?」という質問。ギリギリまで食べて薄くなった皮を誇らしそうに見せてくれる子供たちが何人もいました。子供らしい姿に、どこかほっとした気持ちになり、嬉しくなりました。

今までと違う「新しい」形を模索

「新しい生活様式」を受けての学校生活の中で、学校給食や給食の時間、食育も今までとは違う「新しい」形が求められていくのかもしれません。その変化をいかに受け止めていくか、目の前の子供たちに、食を通して何ができるか、何をすべきか。新たな気持ちで「新しい」を前向きに捉え、取り組んでいきたいと思います。