栄養士コラム

第128回「給食に込めた〝思い〟伝えたい」

本橋由江

宮城県立支援学校岩沼高等学園 栄養教諭

本橋由江

「手作りの料理には愛情という目に見えない調味料が入っている」私がそう考える食の原点は、亡き母、祖母から受け継いだものです。給食のモットーは「お金はかけずに手をかける。給食は絶対手作り」と、寄宿舎設置の高等支援学校(現在の勤務校)では、三食分の献立作成と、様々なことにこだわりを持つ生徒の食の課題を解決するべく奮闘中です。

時には思い悩むほどの残量

先が見えない不安を抱えたまま、学校がスタートして早5ヶ月。行事が後半にずれたり、突然の人数変更があったりと、例年にはなかった仕事で多忙を極める毎日が続いています。「新しい生活様式」を取り入れた給食は、食べることに集中し、会話は控えるようになったとはいえ、たまにですが「こんなに生徒のことを考えて作った給食なのに、なぜこれほど残食があるのか。担任の先生方は、きちんと給食指導してくれているのだろうか」と、思い悩むほど残量が多い日があります。が、忙しさに紛れ、喉元過ぎれば熱さはなんとやらで、特に対策を講じないまま時が過ぎていました。

栄養教諭の仕事を授業で説明

ある日、「学校内のいろいろな仕事」という2年生の特別活動の授業に招かれ、栄養教諭の職業紹介をすることになりました。どんな職業なのか、何時間勤務か、なぜこの職業を選んだのか、大変なことや、やりがいなどを取材形式で生徒に問われました。
私は、国で定められている栄養基準を元にこの学校の栄養価を算出して献立作成していること、毎日記入しなければならない書類がたくさんあること、勤務時間内では仕事は終わらずほぼ毎日残業していること、自分の職が理解されていなかったり給食の残量があったりすると落ち込むことなど、仕事の詳しい内容とありのままの気持ちを正直に生徒に伝えました。

生徒の心に届いた給食づくりへの思い

好き嫌いの多いK君が、私の話を聞き終わると同時に「もう残せない」と、ぼそっとつぶやきました。周りにいた生徒も静かにうなずき、授業後担当の先生からは「彼の心にとても響くものがあったようです。ありがとうございました」と感謝されました。
K君の私を見る目が尊敬のまなざしに変わり、苦手な給食も頑張って食べるように変化しました。自分の仕事は、そうするのが当たり前のものとして捉え、私がきちんと伝えなかったから、先生も生徒も「分からない」のではなく「知らなかった」だけだと気付きました。

栄養教諭の役割は多重奏

栄養教諭はティーチャー、コーディネーター、カウンセラーと3つの役割の他に、私は、クリエーターとアーティスト、そしてごはんを作ってくれる人が持つ包容力や優しさ、温もりを持つマザーの役割もあるのではないかと感じています。それをしっかり伝えながら、人としての魅力を磨き、子どもたちの心と身体の成長を笑顔で見守っていきたいと思います。

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